こんにちは、apro-incの業務改善・DXコンサルタント、AYAKAです。
「ツールを選んで導入したのに、1ヶ月後には誰も使っていない」、これはDX失敗の中でも最もよく見るパターンです。2026年の調査では、DX失敗の主要因として「現場の非利用」が繰り返し挙がっています。
不思議なのは、ツールを選ぶ前に何十時間もかけて比較・検討したにもかかわらず、この問題が起きることです。原因はシンプルです。ツールは正しく選んでも、現場の実態を知らずに導入したため、現場に届かなかったのです。
ツールが使われない。本当の理由
「ツールが使われない」問題を調べると、ツールそのものの問題はほとんどの場合ありません。多くは次の3つのどれかです。
- 現場が抱えていた本当の不満と、ツールが解決しようとした問題がズレていた
- 操作への不安・抵抗感を把握していなかったため、適切なフォローが用意されなかった
- デバイス・環境の制約を考慮していなかったため、現場で実際には使えない状況だった
これらはすべて「導入前のヒアリング」で把握できたことです。ツール選定と同じくらいの時間とエネルギーを、現場ヒアリングに使う企業が少ないことが、この問題の根本です。
導入前に現場担当者に聞くべき5項目
次のシートを使って、導入前に現場の担当者1〜2名と30分ずつ話してください。ツール導入の成否はここで8割決まります。

| 確認テーマ | 聞くべき質問 | 回答から何がわかるか |
|---|---|---|
| 現状の不満 | 「今一番時間がかかっていて、なくなればいいと思う作業は何ですか?」 | ツールで解決すべき課題の優先順位。ここがズレると導入後に「期待と違う」になる |
| 抵抗感・懸念 | 「正直、新しいツールを使うことについてどう感じますか?不安なことはありますか?」 | 反発の種類(操作不安・仕事がなくなる・慣れた方法を変えたくない)を事前に把握し、対策を設計できる |
| 理想の状態 | 「この業務が改善されたら、何が一番うれしいですか?どんな状態になってほしいですか?」 | 現場が求めるゴールを把握。経営者のゴールとのズレを事前に発見できる |
| 使用デバイス・環境 | 「業務中、主にPC・スマホ・タブレットのどれを使っていますか?ネット環境は安定していますか?」 | ツール選定の制約条件。スマホ非対応のツールを現場がスマホ中心の業務に使えば即失敗 |
| 研修・サポートニーズ | 「新しいツールを使い始めるとき、どんなサポートがあれば安心して使えますか?」 | 導入後のフォロー計画の設計材料。「動画マニュアルがほしい」「隣で教えてほしい」など人によって異なる |
特に重要なのは2番目の「抵抗感・懸念」です。これを聞かずに導入すると、表面上は従っているように見えて、実は使っていないという状況が生まれます。「正直、新しいツールを使うことについてどう感じますか?」という問いかけは勇気がいりますが、これを聞けた企業は定着率が明らかに高くなります。
ヒアリング結果をツール選定と導入計画に反映させる
ヒアリングは聞くだけで終わらせてはいけません。得た情報を必ずツール選定と導入計画の2つに反映させます。

| ヒアリングで判明したこと | ツール選定への反映 | 導入計画への反映 |
|---|---|---|
| 現場の7割がスマホ中心 | スマホアプリが充実したツールを優先選定 | PC前提の操作研修を廃止してスマホでの操作動画を用意 |
| 「仕事を取られる不安」がある | ツール選定基準に変化なし | 導入説明会で「自動化後の時間の使い方」を明示する |
| 入力が苦手なスタッフが多い | 入力項目が少なく自動入力機能があるツールを選ぶ | 最初の1ヶ月は入力ミスを責めない「練習期間」と宣言 |
| 現状の不満は「承認の遅さ」だった | ワークフロー・承認機能が充実したツールを優先 | 承認ルートの設計を最初の1週間で完了させる |
ここで大切なのは「ヒアリングした内容を担当者にフィードバックする」ことです。「こんな声が集まったので、このツールを選びました。これはあなたの○○という不満を解決するためです」と説明できると、現場の当事者意識が一気に高まります。
ヒアリングを実施するときの3つのコツ
- 1対1で話す:グループでのヒアリングは本音が出にくい。管理職の目がある場で「不安がある」とは言いにくい。可能な限り1対1で行う
- 「評価しない」と伝えてから聞く:「今の業務をどう思っているか、正直に教えてほしい。評価には使わない」と最初に宣言することで本音が引き出せる
- メモではなく「一緒に確認する」形で記録する:「今おっしゃったことはこういうことですか?」と確認しながらメモを取ると、後で「言ったことと違う」というトラブルを防げる
AYAKA’s View
apro-incが伴走支援に入ると、必ず最初に現場ヒアリングを行います。経営者が「これで困っている」と言った課題と、現場担当者が「これが本当に面倒」と言う課題は、驚くほどズレていることがあります。
そのズレを埋めずにツールを選ぶと、経営者には「いいツールを入れた」と思えても、現場には「また使わないツールが増えた」と感じられます。
「ヒアリングのやり方がわからない」「現場の声を聞いてほしいが自分ではうまく聞き出せない」。そういったご相談も、apro-incにお気軽にどうぞ。ヒアリング代行から導入計画の設計まで一緒に進めます。
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