「残業が美徳」の会社ほどDXが遅れる理由 働き方改革とデジタル化の意外な関係

週末コラム

こんにちは、apro-incの業務改善・DXコンサルタント、AYAKAです。

土曜日のコラムです。今日は少し踏み込んだ話をしたいと思います。テーマは「残業が美徳の文化と、DXの関係」。ツールの話ではなく、組織の文化と心理の話です。

コンサルティングをしていると、ある種の会社に何度も出会います。「うちはみんなよく働いてくれている」「遅くまで残ってくれている社員が評価される」という文化が根付いている会社です。そして不思議なことに、そういう会社ほどDXが進んでいないのです。

「忙しい」が組織の通貨になっている

組織の中で「忙しさ」が価値の尺度になっているケースは、想像以上に多いです。

「今日も遅くまで残っていた」「休日も仕事している」「仕事が山積みで手が回らない」。これらを口にすることで、その人が「頑張っている」「責任感がある」「会社に貢献している」という評価を無意識に期待している。

忙しさが「努力の証明」になってしまっているのです。これを私は「忙しさの通貨化」と呼んでいます。

なぜ「業務の見える化」を嫌がるのか

DXの第一歩は「業務の棚卸し・可視化」です。誰が・何を・どれくらいの時間でやっているかを明らかにすること。

でも「忙しさの通貨化」が起きている組織では、この可視化に強い抵抗感が生まれます。なぜなら、可視化することで「実は無駄な業務が多かった」「この人の仕事量は思ったより少ない」「この会議は意味がなかった」という事実が明らかになるからです。

頑張ってきた時間の多くが「無駄だった」とわかることは、これまでの自分の価値が否定されるような感覚を生みます。だから無意識に「見えない方がいい」という心理が働く。

DXが進まない理由をヒアリングすると、「ツールの費用」や「使い方がわからない」よりも、この「見られたくない」という心理的バリアーが最大の壁になっているケースが非常に多いです。

データが示す事実 DXは残業を減らす

中小企業基盤整備機構の調査では、DXに取り組んだ中小企業の成果として「全社員の70%の従業員の残業が70%近く減った」という事例が報告されています。また「業務の自動化・効率化」「コスト削減・生産性向上」に次いで「働き方改革・多様な働き方の実現」がDXの成果として多く挙げられています。

「DXを進めたら残業が減った」ではなく「残業を減らすためにDXが必要だった」と言うべきかもしれません。

2030年には約340万人の労働力不足が見込まれています。人を増やせない時代に生産性を上げるには、デジタルによる効率化しかない。「残業でカバーする」という選択肢は、人口動態的にも限界を迎えています。

「空いた時間に何をするか」がDXの本質

DXをためらう経営者から、こんな言葉を聞くことがあります。「業務が効率化されて、社員が暇になったらどうする?」

この問いは、実はとても重要なことを示しています。効率化で空いた時間に何をさせるか、というビジョンがないまま「とりあえずDXを進める」という発想では、確かに中途半端になります。

でも逆から考えると、答えは明確です。社員が毎日2時間の残業をしているとしたら、その2時間は「本当はやりたいのにできていない仕事」に使うべきではないでしょうか。顧客との深い対話、新サービスの企画、チームのコミュニケーション、自分自身のスキルアップ、これらは残業で奪われ続けている時間です。

DXの本当の目的は「業務を減らすこと」ではなく「人が本当にやりたい・やるべき仕事に集中できる時間を作ること」です。

文化を変えるのは、小さな成功体験

「残業が美徳」の文化を一夜にして変えることはできません。でも、変えていくことはできます。

最も効果的な方法は、小さな成功体験を積み上げることです。ある業務をデジタル化して「毎日1時間が浮いた」という体験をした人は、「ああ、これが可能なんだ」と実感します。その実感が、「業務の見える化」への心理的抵抗を少しずつ溶かしていきます。

apro-incが支援している中小企業でも、まず1つの業務から始めて「月8時間の削減」を実現した担当者が、次の改善を自分から提案してくるようになったケースがあります。成功体験が文化を変えるのです。

AYAKA’s View

「忙しさを誇ることをやめる」

これが、DXを本当に進めるための最初の文化的な一歩だと思っています。

「忙しい」は状態であって、価値ではない。「成果を出している」が価値です。DXは、この当たり前のことを組織に実装するための手段です。

土曜の今日、少しだけ考えてみてください。あなたの会社では、定時で帰る社員と遅くまで残る社員、どちらが評価されていますか?その答えが、御社のDXのスピードを決めているかもしれません。

来週から動き出したい方は、ぜひapro-incにご相談ください。文化の壁を越えながら進めるDXの伴走支援をしています。

【お問い合わせはこちら|業務改善・DXのご相談】 https://apro-inc.biz/contact/
【Xで記事について発信しています|フォローして頂けると嬉しいです!】https://x.com/ayakan_tp

タイトルとURLをコピーしました