【GW特別コラム】SpotifyよりCDを買う日 「探す手間」が生む音楽との深い関係

大型連休特別連載

GW特別連載「デジタルの向こう側へ——五感をひらく8日間」第5日目

こんにちは、apro-incの業務改善・DXコンサルタント、AYAKAです。

GW5日目の今日は、久しぶりにCDショップに立ち寄りました。

用事でもないのに、ふらりと。最近はSpotifyかApple Musicで済ませることがほとんどなのに、なんとなく引き寄せられてしまいました。棚の前に立って、1枚1枚ジャケットを眺めながら「これにしようか、あれにしようか」と迷う時間。それだけで、なんだか満ち足りた気持ちになったのです。


音楽の「量」は、史上最大になった

2024年の音楽配信売上は1,233億円と過去最高を更新し、11年連続で増加しています。売上の9割以上はストリーミングです。Spotifyだけで1億曲以上の楽曲が登録されており、月額1,000円程度で、人類が作ったほぼすべての音楽を聴けるようになりました。

これは本当に、すごいことです。10年前には考えられなかった豊かさです。

でも、今日CDショップの棚の前に立ってみて、ふと気づいたことがありました。1億曲から何を聴くかを選ぶのは、意外と疲れる。選択肢が多すぎると、人は「なんでもいいや」「とりあえずいつものプレイリスト」になりがちなのです。


「機能的価値」と「情緒的価値」 音楽市場の逆説

面白いことが起きています。ストリーミングが9割以上を占める時代に、アナログレコードの生産枚数が2010年比で約3倍に増えているのです。

なぜ不便なレコードが売れるのか。調査や研究によると、レコードを買う人が求めているのは「音楽を聴くこと」だけではないといいます。レコードに針を落とす行為、大きなジャケットを手にとる感触、ライナーノーツを読む時間。つまり「音楽と向き合う体験」そのものが目的になっている。

KDDIの研究員がこう表現しています。「サブスクが提供するのは機能寄りの価値。レコードは情緒寄りの価値」。まさにその通りだと感じます。

さらに驚くのは、米国でレコードを買った人の半数はレコードプレーヤーを持っていないという調査結果があること。聴けないのに買うのです。それほどまでに「所有する体験」「選んで手に入れる体験」に価値があるということです。


「探す手間」が記憶を作る

今日、CDショップで1枚のCDを選ぶのに30分かかりました。Spotifyなら10秒で再生を始められるのに。でも、選んで買ったそのCDは、家に帰って最初の1曲を流したとき、「ああ、今日CDショップで迷ったやつだ」という記憶が鮮明に蘇りました。

手間が、記憶を作るのです。

第3回コラムで「手書きの遅さが思考の余裕を生む」という話をしましたが、音楽もまったく同じ構造があります。スキップできない、早送りできない、1枚を最初から最後まで聴く。そういう制約が、音楽をより深く体験させてくれます。

Spotifyで「おすすめ」に流されるまま聴いた曲と、CDショップで30分迷って選んだ1枚。数年後に覚えているのは、きっと後者のほうです。


「制約の豊かさ」をビジネスに応用する

これはビジネスにも通じる話だと思います。

情報過多の時代、企業も人も「選択肢を増やすこと」がサービスの改善だと信じがちです。でも実際には、選択肢が多すぎると顧客は疲弊し、「とりあえずよく知っている会社」「なんとなく慣れたやり方」に流れてしまいます。

意図的に選択肢を絞る、体験に手間をかける、「探す余白」を残す。こういった設計が、ブランドへの愛着や記憶への定着を生むことがあります。

コーヒーショップで「ブラックかミルクかの2択しかない」老舗喫茶店が愛され続けるのも、ECサイトで「今月の一冊」しか売らないオンライン書店が熱狂的なファンを持つのも、この「制約の豊かさ」が機能しているからかもしれません。


AYAKA’s View

今日買ったCDは、家に帰って最初から最後まで通しで聴きました。いつもはながら聴きなのに、今日は珍しくライナーノーツを読みながら、コーヒーを飲みながら。それだけで、なんだかとても贅沢な午後になりました。

SpotifyもApple Musicも素晴らしいサービスです。でも、週に1度だけ「1枚を選んで、最初から最後まで聴く」時間を作るだけで、音楽との関係が変わるかもしれません。

このGW、もし近くにCDショップやレコード屋さんがあったら、覗いてみてください。「探す手間」の中に、スマホの画面では出会えない音楽が待っているはずです。

明日(5/4)は「スマートウォッチより、疲れたら眠る 数値化できない『身体の声』の聞き方」をお届けします。


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